/ 鼠径ヘルニアについて
2024.10.08
1.鼠径ヘルニアとは
•鼠径部(足の付根)の筋膜が加齢や生活習慣、疾患などで弱くなりその隙間から臓器(腹膜、腸管、膀胱、大網、など)が皮膚の下まで飛び出してくる疾患です。
•放置すると徐々に膨らみが大きくなり、男性では陰嚢まで腫れてしまうことがあります。違和感が強くなるのはもちろん、見た目も悪くなります。更に飛び出した臓器、特に腸が元に戻らず、痛み、吐き気などを伴う場合(ヘルニア嵌頓)は緊急手術が必要になることがあります。この場合の緊急手術の死亡率は5%程度との報告があり、そうなる前に手術可能な状態の方は手術したほうが良いでしょう。
•鼠径ヘルニアになりやすい方の特徴
1.男性で、40歳以上
2.咳をよくする人(肺に慢性の病気を持っている人)
3. 職業:重い物を持ったり、立ち仕事をする人、スポーツをやる人や選手
4. 肥満の人
2.鼠径ヘルニアの診断
1.重要なのは問診
発症当初は鼠径部に無痛性の膨らみが生じます。これは、立位や腹に力の入る動作時に生じます。通常膨らみは柔らかく、押さえたり、横になったりすると引っ込みます。 これを問診で確認します。
2.触診
医師による立位、臥位での視診、触診を追加 触感、臓器がどこから飛び出しているの確認、ときにび出した臓器をあるべき位置に戻す(還納)を行います。飛び出した臓器が腹腔内に戻らない場合は、後述する手術方法を変更しなければいけないこともあります。
3.画像診断
膨らみがわからない、皮下脂肪で分かりづらいなどのケースでは補助的にエコー検査やCT検査も追加されることがあります。
当院では鼠径部からの脱出がはっきりするように腹臥位(うつぶせ)でCT検査を行っております。
3.鼠径ヘルニアの治療
治療は有効な薬剤などはなく手術のみとなります
•鼠径ヘルニアの手術方法
1)鼠径部切開法(手術)
2)鏡視下手術法
1)鼠径部切開法(手術)
a)従来法 メッシュを使用せず組織を使って修復する。鼠径部を5-8cm程度切開しヘルニア嚢を腹腔内 に戻した後に周辺の筋肉または筋膜(筋肉を包む膜)を利用してヘルニア門を閉鎖する方法
b)メッシュ法 鼠径部を5-8cm程度切開しヘルニア嚢を腹腔内に戻した後に鼠径部を覆う筋肉の表層か深層に メッシュを留置する方法
鼠径部切開法
a)従来法
b)メッシュ法
a)従来法
ヘルニア門を縫って閉鎖する手術方法
b)メッシュ法
2)鏡視下手術法:腹腔鏡下で腹膜の上のスペースを広く剥離しメッシュを留置する術式
TAPP法
TEP法
2)鏡視下手術法TAPP法
2)鏡視下手術法TEP法
当院での術式選択
鏡視下手術TAPP,TEP法でもそれぞれ得意とする状態が異なりますため患者さんの状態、ヘルニアのタイプを見極めて術式選択してまいります。
まとめ
•鼠径ヘルニアという疾患の説明と診断、治療法まで述べました
•鼠径ヘルニアの治療法は手術のみです
•当院では鼠径ヘルニアの日帰り手術に力を入れております
•各患者さんの状態に応じて適切な手術方法を選択いたします
•手術術者、手術助手、麻酔科医、ナースも内視鏡手術に特化したスタッフで行っております